メリットの反対側には敵がいる

■くすまない女

西加奈子さんのエッセイを
読んでいたら、
こんな一文がありました。

西加奈子(著)
「○○ない女」より引用

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電車に、女性誌の吊り広告があった。

何気なく見ていると、
「くすまない女になる」
と書いてあって、ドキッとした。
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実は、
ドキッとしたのには、
理由があります。

なぜ、西さんはドキッと
したのでしょうか?

それは、
「しないようにする」式で
書かれていたからです。

■しないようにする

最初に否定すべきことを書き、
それ以外を促す言い方があります。

「しないようにする」形式です。

(メイク記事らしいのですが)
「くすまない女になる」
と書かれていると
とても前向きのアドバイスに思えます。
西さんの表現でいうと
透明感ある女性を目指そう
と読者に訴えています。

ところが
このキャッチコピーを読むと
むしろ危機感をあおられます。

なぜなら、脳の仕組みを
巧妙に利用した表現だからです。

子供のころから
親に散々言われたことありませんか?

「落とさないように行きなさい」
「忘れないようにしなさい」

などなど、

私は注意力散漫なので、
親には私の失敗する姿が
見えるのでしょう。

なので、ご親切に
「落とさないように行きなさい」
というのです。

悪いことを
言っているわけではありません。

励ますまではいきませんが、
私のことを思って、
うまくいくように
言ってくれているのです。

ですが、この言い方は
「落とせ」「忘れろ」と
言っているのと同じです。

■想像しないでください

まず、第一に
脳はイメージできないことは
理解できません。

例えば、

「タイガーウッズを
思い浮かべないでください」

言われたら、どうですか?

イヤでも
赤いナイキのゴルフシャツを着た
タイガーウッズを
思い浮かべてしまいます。

タイガーウッズが
最初に出てきたから
ひっかけられたと思います?

文章の順序を変えても同じです。

「これからいうことを
思い浮かべないでください。

渋沢栄一」

渋沢栄一
名前を聞いた時点で
知らない人だったとしても

「渋沢栄一?
どこかで聞いたなー
新札の人じゃないの」

具体的に顔が思い浮かばなくても
「新札の人」と、
わざわざ想像しようとします。

この秘密は
名詞、動詞を想像して
理解する脳の仕組みのせいです。

名詞に当たる
「タイガーウッズ」
「渋沢栄一」、

そして、動詞に当たる
「思い浮かべる」様子を想像し、

打ち消して「思い浮かべない」を
することで、
言葉の意味を理解します。

そのため、
「落とさないように行きなさい」
「忘れないようにしなさい」
と言われると、

実際に思い浮かべるのは
(自分が)「落とす」
(自分が)「忘れる」です。

すると、そのイメージ通り
行動するため、
素直に落としたり、
忘れたりするわけです。

同様に
「くすまない女になる」
というタイトル(キャッチコピー)を
見たときには、
まず「くすんだ女」を想像します。

それから、それを基準にして、
「くすんだ女」と違う女になる方法が
書かれているのか?
と理解します。

西さんがドキッとしたのも
自分に対して
くすんだ女のイメージを
持ったからです。

そして、
「しないようにする」文には、
さらにいやらしい
心理効果があります。

否定対象を想像させることで
読者を誘導することが
できるのです。

■スタンフォード監獄実験

最近ニュースで
中高生イジメ報道がよくあります。

私なんかは
イジメた連中まとめて
少年院に入れればと思います。

そうすれば、
あとは一生いじめられる人生です。

しかし、
学校側も保身のためか
まともに対応しません。

今までの前例を見ても
うやむやにして
長い時間かけたほうが、

世間から忘れられてしまうので、
結局は学校側に有利だからです。

また、
なぜか警察の介入もありません。

学校が捜査と裁判と罪状を
勝手に決められる、
シャレではありませんが
これが本当の操作といえるでしょう。

イジメられる側になったら
誰からの助けもなく
ただ沈んでいくだけ。

学校の外に訴えるには
今のところ自殺しかないのが
現状です。

しかも、
メディアに取り上げられるように
派手にやらないと
その自殺も無駄になります。

韓国の財閥の事件を
バカにしている場合ではありません。

日本でも事実のねじ曲げが
平然と行われているのです。

ところで、あなたは
同じように生き地獄のイジメに
あってみたいですか?

心理学の有名な実験で
支配する側と支配される側について
興味深いことがわかりました。

その有名な実験とは、
スタンフォード監獄実験です。

この実験は
看守役と囚人役に分かれ
行動の変化を観察する
というものです。

看守役と囚人役に分かれて
という時点でおわかりの通り、
最期には、想像通りの
ひどい結末を迎えました。

看守役は支配的で高圧的になり
禁止されていた暴力も
振るうようになります。

一方、囚人役の方は
服従的になったり
精神崩壊を起こすに至りました。

しかも、そんな状態に
なってしまっているのに、

実験を指揮した教授は、
それから人間が
どうなるのか見たくて
放置してしまったのです。

この実験は
そのままイジメの構造です。

もっとも現実が
もっとひどいのは
イジメられるのは
一人だということです。

この実験での注目点は
グループ属性です。

■共通の敵

女性誌に限らず、
想定読者のグループ属性を
雑誌はとても大切にします。

セグメント属性ともいわれますが
対象読者を絞り、
狙った人にだけウケればいい
と考えて紙面を作っていきます。

(それが購読の継続にもつながります)
では、読者に

「あなたは
このセグメントに属している」

とより強く意識させるには
どうすればいいのでしょうか?

それは共犯関係を築くことです。

つまり、共通の敵を作り出し
その敵への反感を共有することです。

共感とよく言われますが、

人に共感するとは
その人の感じている敵、味方に
共感することです。

敵味方でピンとこなければ
好き嫌いです。

好きは自分に近づけたいし
嫌いは自分から遠ざけたい。

その敵味方の線引きに
「そうだよねー」と相槌を打てば、

「この人は同じだ。
私の気持ちをわかってくれる」

と共感につながるのです。

共感ではなく
共犯と表現するのは、

敵味方の基準が同じなのであれば、
攻撃対象も同じ共通の敵ですので
次第に共犯関係になっていきます。

イジメの問題も
イジメグループ内の
共犯関係が
より陰湿な力になります。

おそらくグループ内には
そこまでやりたくないと
思っていた人もいたはずです。

しかし、共犯関係のため、
抜けられなくなってしまい
したくもないイジメに加担してしまったのです。

■敵にならないようにしたい

人間はどこかに属したい欲望や
他の人より優位に立ちたい
欲求があります。

その心理を利用したのが
共通の敵をたてる
「しないようにする」文です。

簡単に言えば
「しないように」の部分が
入りたくないグループで、
敵で、忌み嫌うものです。

グループと言っても
イジメグループといった
明確なものではなく、

「いけてる」「いけてない」の
「いけてる」方にいたいみたいな、

「若い」「老けてる」では
「若い」の方だろうみたいな、

自分に対する評価、
自分の立ち位置などの
概念的なグループです。

「くすまない女になる」
では、くすんだ女が敵であると
雑誌と価値観を共有し、
共感していることになります。

「くすんだ女なんて、イヤよねー」
「そうよねー」
の好き嫌いの境界線に
共感したからです。

コピーではメリットを訴えることが
重要です。

ですが、
メリットの反対側には
顧客との共有する敵があるからこその
メリットでもあるのです。

例えば、
透明感のある女性になれるメリット
に対しての反対には、
疲れてくすんだ女なんてなりたくない
気持ちがあります。

西さんがドキッとしたのは、
このままだと自分が
くすんだ女の負け組に
なってしまうと感じたからに
ほかなりません。

また、「しないようにする」文で
自分がくすんでいる姿を
イメージしてしまいました。

メリットを考える場合には、
同時に「顧客の敵は何なのか?」を
考えることが重要です。

お笑いの番組を見ていても
感じませんか?

自分が笑わせるというより
誰かを笑う笑いです。

芸人と同じ
笑う側に立てば勝ち組であり、
笑われる側は負け組です。

メリットの反対側には
敵がいます。

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